赤ちゃんが誕生したときの「お宮参り」や、お引越しをしたばかりのときなど、「その土地の氏神様にご挨拶に行きなさい」と言われたことはありませんか?
よく耳にする「氏神様」という言葉ですが、実は厳密にいうと「その土地の神様」のことを言うワケではないのです。
その土地の神様は「産土(うぶすな)神様」と言うんですよ。今日は、こうした神様にまつわるちょっと面白いお話しをしようと思います。
氏神様ってなんだろう?
まるで、「その土地の神様」のように言われている氏神様。でも、実はこの字のとおり、もともとは
がまつられている神様のことを言っていました。
なので、もともと「氏神様」とは、その氏族の守り神のことをさしていたのです。
結婚で氏(苗字・名字)が変われば変わりますし、同じ地域に住んでいる人でも、氏(苗字・名字)が違えば違います。それぞれの家系に、それぞれの氏神様がいたんですね。
産土(うぶすな)神様って聞いたことある?
突然ですが、「産土(うぶすな)神様」という言葉を聞いたことはありますか?
あまり知られていないかも知れませんが、「産土(うぶすな)神様」とは、あなたが生まれたときの出生地の守り神であり、産まれてから死ぬまでのあいだ、一生を通じて変わることのない、あなたを守ってくださる神様のことです。
なので、たとえ家族であっても、それぞれの出生地が違えば、それぞれの「産土(うぶすな)神様」は違います。
人の一生を見守ってくださるのは、その人の出生地の守り神である「産土(うぶすな)神様」とされていますので、本来であれば、「お宮参り」も「七五三」も、生まれた土地にある「産土(うぶすな)神様」のところにお参りにいくのが正式な姿となります。
もしも引越しなどをしていて、生まれ育った土地に戻るのが大変な場合は、自分が住んでいる土地にある、「産土(うぶすな)神様」と同系の神様がまつられている神社にいくのもいいですね。
氏神様と産土神様は混同されている
今みてきたように、本来の意味は
- 氏神様・・・氏族(一族)の守り神
- 産土神様・・・その土地の守り神・そこで誕生した人の、一生の守護神となる
ですが、現在では、このように明確な分かれ方をしておらず、氏神様もまるで「地域の神様」のように思われていますよね。
特に「その土地の氏神様にあいさつに行きなさい」とか「この地の氏神様に参らないと」と言ったりする場合には、完全に「その土地の神様=氏神様」と思っているケースですね。
このように、言葉がもつ意味が変化していったのには、歴史的な背景があります。
古代日本では血縁関係を大切にしていた
日本では、古代においては、氏(うじ)による繋がりが強く、血縁関係をもった者同士が集まって活動する場面が多くありました。
そのため、神様をおまつりするときも、氏族がまつった神を「氏神様」と呼び、そして、その氏族の構成員を「氏子(うじこ)」と呼んでいました。
中世日本では血縁社会から地縁社会へ
もともと血族を重視してきた日本でしたが、時代の変化とともに、「同じ地域に住んでいる者同士」という繋がりが重視されるようになりました。
そのような流れの中で、その土地の神様である「産土(うぶすな)神様」を「氏神様」としてまつるようになっていきました。
この時代から、だんだんと「氏神様」「産土(うぶすな)神様」の違いが曖昧になっていったのです。
結局のところ、どうしたらいいの?
「氏神様」「産土神様」それぞれの話を紐解いてきましたが、個人的には、マメ知識として知っておいたらいいくらいに思っています。
地域の神様のことを氏神様と言っても問題ないですし、産土神様がどの神様なのかを把握している人も決して多くはないでしょう。
厳密に言うと、そうした違いがあるということだけ知っておいたらよいのではないでしょうか。
もう一度まとめておきますね。
- 氏神様……氏族(一族)の守り神。結婚などで氏が変われば変わる。家族なら同じ。
- 産土神様……出生地の守り神。死ぬまで変わらない。家族でも出生地が違えば異なる。
まとめ
ちょっとしたことですが、少し知っているだけでも、いざというときの話題になります。なかなか神様の話題が出ることは多くないと思いますが、もしも今度「お宮参り」や「七五三」などの話題が出ることがあったら、さりげなく話してみるのもいいかも知れませんね。
日本人として、知っていると面白い、ちょっとしたマメ知識でした。